Works
「お鶴流」という流儀
「お鶴さんの川柳は恋の句が多いですね」とよく言われます。実際その通りなんですが、恋の句を詠むようになったのは、私が川柳デビューしたラジオ番組の川柳コーナーが「艶出し川柳」というタイトルにリニューアルしたことがきっかけでした。最初の頃は、恋愛ならではのドキドキワクワク感や胸がキュンキュンするような思いを詠むのが楽しくて仕方ありませんでした。何せそれまでは、ほんと家事と育児しかしていませんでしたから(笑)。でも、恋の句をたくさん詠んでいくうちに、「1日が24時間であることと、人を好きになるという気持ちというものは万人共通のものなんだなぁ」と思うようになったんですね。そこから私自身のテーマを「恋」にしようと決めました。
「お鶴流の川柳とは?」。これもよく聞かれることなのですが、強いて言えばそれは「ストーリーのある句を詠むこと」。17音で一編のストーリーが思い浮かぶ、そういう川柳が私は好きです。
川柳の三要素に「うがち」「おかしみ」「軽み」というものがありますが、それに加えて「視点」「共感」「ストーリー性」という要素が大切だと私は考えています。着眼するところが当たり前ではなく、詠んだ時「確かに言われてみればその通りだね」とみんなが思えるような句。そんなふうに「視点」と「共感」がちゃんとできている句は、良い句だと思います。そして私が望むのは、プラス「ストーリー性」です。着眼点がありきたりではなく、それでいて共感でき、そこに物語があれば、「ああ、素敵だなぁ」って思います。例えば私の場合なら、恋をテーマにした物語のある川柳。つまり「17音のラブストーリー」と呼ぶことができるのかもしれませんね。
万能川柳掲載1000句
~2/365の狭き門を突破し続けて~
川柳作家・お鶴さんは2022年2月11日、毎日新聞の人気川柳コーナー「仲畑流万能川柳」で1,000句掲載を達成しました。万能川柳といえば、川柳愛好家の間でも「毎日出し続けても1年に2回掲載されればすごい」と噂されるほどの難関。“確率365分の2”の狭き門を突破し続け、この度見事1,000句掲載を達成したことを記念して、その作品たちを一挙に紹介します。
- 告げ口のように小さく注意書き
- オムレツにスキって書いてみたい朝
- 竹の群れ風を育てるように揺れ
- ハンカチはシルク嘘泣き用ですの
- 元彼へしあわせそうな声つくり
- 愛される女かかとも美しい
- 恋ひとつ跨いで家庭へともどる
- ヘリポート使わないままビル解体
- 化粧のり良くて多めにする募金
- 悲しみの後ろで幸が出番待ち
- たんぽぽとバラの性格人が決め
- ふたつみつ恋を仕舞って梅茶漬
- 喜んでくれる人いて栗ごはん
- 愛想いい人と言われてそうしてる
- イヤーカフ私はいつも欲深い
- 包丁の音もおいしいロースカツ
- この歳でなんてどの歳恋は今
- お化粧がバッチリできた日の背すじ
- 緋牡丹のお竜座りでペディキュアし
- 底抜けに明るい人を避けたい日
- 明日という不確かがありおもしろい
- ふり向けば親が立ってた日々は過ぎ
- 晩年にまだ晩年が待っている
- 千切りのキャベツ怒りの量になり
- 幼い日聖域だった百葉箱
- マッサージ機能を持った彼がいい
- 五七五自律神経ととのえる
- 督促状束ね志ん生聴いている
- 意味不明「女にしとくのは惜しい」
- ハンカチの周囲にレース付ける人
- 初対面一オクターブほど気取る
- 殉教の地でカステラを選んでる
- 恋愛を統計学で語られる
- 熱いのでお気をつけくださいアタシ
- 秋の風指輪を売った帰り道
- ヤットコサ書けて落款逆さにし
- 家にいてひとりキャンプのよな私
- ホールケーキ持て余してる誕生日
- ジャケットを選ぶ息子が大人びる
- 本当のピーク何年後にわかる
- 脳みそとおっぱい揺れる迷い道
- 小学生「生きる」が並ぶ書道展
- 年ごとに感じています夏の量
- クラス会未来のことも話しましょ
- ジュースだけ見つめジュースを運ぶ吾子
- 好きなのね彼の悪口ばかり言う
- 靴下の左右そろわぬ大家族
- 駆け引きのない3才のスキキライ
- 2才には2才の都合走り出す
- 繰り言とあんこ楽しい午後のお茶
- 飾る用トースト用の皿があり
- きれいねと言うのが礼儀お振袖
- はみ出したメロン攻め方迷うパフェ
- 嫁姑妻母こなす女です
- 長生きの会になってるクラス会
- お隣のピアノ上達する自粛
- 初登園帽子のゴムを嚙みながら
- 寡婦なのでたまに淋しいふりをする
- 美しい昔一揆があった村
- バーゲンになった手帳を買う4月
- 行儀良い会話はキスの前までね
- ドキドキで聞く尼様の恋話
- 意志を持ちくわえる婦人体温計
- めんどうな話マスクに溜る息
- 一升瓶出世はしない顔そろう
- 一万回以上つくったお味噌汁
- 前衛的絵画と言うが象の作
- 調律を終えたピアノが凜と立ち
- 反物の雅(みやび)ころがす呉服店
- きれいでしょ嘘で磨いておきました
- 洗濯物干して新居が完成す
- 庭の柿力道山と同い年
- 悲しいを悲しかったにする明日
- 日本人パンのへそにも置く桜
- 鼻のないクレオパトラのしゃれこうべ
- 「何をして遊んでるの」と孫のTEL
- 狩りをせぬ男になって歯が抜ける
- 男でも女でもない祖母である
- ケータイを忘れ私がいなくなる
- 心にも活断層があって冬
- 彼女から妻に変わってから試練
- 掃除機と私ぶつかりながら行く
- コロナには負けぬ恋の句詠まなくちゃ
- 犯人がわからぬ本と年を越す
- 娘のシャンプー夫もちょっと使いたい
- ぎゅうぎゅうで見た若冲がなつかしい
- 好きですもマスクの中で自粛中
- 姑は以前から目でものを言う
- インターフォン越しに心を込めて言う
- 飲み会を終えてMacの蓋を閉じ
- スコールの後に息するアスファルト
- もうダメと言った花から枯れ始め
- 水鉄砲届くはんいで逃げるパパ
- 嘘なのね男の声がシャープする
- 缶チューハイ新橋駅は今日も雨
- さささっと書かなきゃ漢字出てこない
- 厚化粧しているけれど少女の瞳(め)
- 憎むにはあって愛すにない理由
- しわのない80才もどうかしら
- 美しい人形自由などなくて
- 恋を終え少し眠たくなっている
- 素人ではないおしぼりの渡し方
- カキ氷夏を励ます音がする
- 消しゴムの丸さ正しい人に見え
- 買わなくていいよみたいな値のシャネル
- 孫がいるお陰ブランコにも乗れる
- 廃校に消火器の赤りんと立ち
- 母の日に娘らも私も母も母
- 牛スジもとろとろなのに来ない彼
- 口紅を買ってゆううつ捨てている
- 大雨を何度も詫びる予報士さん
- 待ちぼうけ店員さんが水を足す
- 風船と男はすぐに飛んで行き
- 靴紐を結び心が立ち上がる
- 春信の女ひょひょいと飛んで行く
- 忠実な目覚まし時計叩かれる
- 元彼になりたいんだと彼が言う
- うちだけに降ってる雨と思う夜
- 読唇術スキではなくて牛でした
- サンドイッチ切断面で自己主張
- 人間の身勝手花は刈り取られ
- 恋もして孫と診察券も増え
- 怒ってるようにフェラーリ通り過ぎ
- その人の好みがわかる飾り棚
- 政治家の詭弁目が慣れ耳が慣れ
- 反対と言えてちょっぴり自信つき
- 会えないという電話あり手酌酒
- 霧の中一名多い点呼かな
- ドラマなら悪い男はすぐわかる
- クローゼット直線裁ちの服が増え
- たまに来て彼氏みたいな顔をする
- やさしい曲流れやさしい句ができる
- 人ほどの悪いことなどせぬ獣(けもの)
- 逢う日にも洗たく物を干している
- 錯覚が終わり悲しい恋になる
- 卒論はコピペ35年前
- 懺悔室許されそうな罪を言う
- 願い事モノではなくてコトになり
- ジャムパンとクリームパンを迷う幸
- 仏壇の前で文句も少し言う
- 先に泣く友へしっかり者演じ
- 朝礼の間夕飯考える
- モノクロにしたら芸術的になり
- 575この束縛に酔っている
- 普段着で会うようになり恋終わる
- ただ走るだけで2才は上機嫌
- 絶交と言って翌日遊ぶ子ら
- 一円を拾う悲しいほど軽い
- スーダンの話ステーキ食べながら
- カーラーとパジャマが集い火事見てる
- えりあしの黒子きわだたせる着物
- 泣いてても主婦は洗濯物たたむ
- 芸者さん後姿もものを言い
- 負けてきた息子ちょっぴり大人びる
- プレゼンに向かうヒップが上がってる
- えび芋が上手に煮えて今日は吉
- 野菜にも女にもある花の時期
- 何千回作っただろう卵焼
- 図書館のスタッフみんな正しそう
- 女房と別れましたと言われても
- ストローの最後の音で恋を閉じ
- 泳がせた男帰ってきやしない
- リクルートスーツ離陸を待っている
- 三十年かけて私の台所
- 竜宮に招かれるのは男だけ
- ファッションもギロチン台も残るパリ
- 居もしない王子のせいで行き遅れ
- 停電の町あり21世紀
- 絵と壺をしまって孫を待っている
- 恋してた時は刺繡のこの部分
- 身の程を知ってる人は彼ができ
- 乙姫と人魚に出会うのは男
- 誰か来てほしいなカレーうまくでき
- 嫁いでも反抗しても娘(こ)は我が子
- 白ワインわきあいあいに疲れた日
- 手に時計つけて本能ひとつ消す
- 祖母という財布になって孫に会う
- 腕時計はずす私を抱くために
- やさしくて丁寧だからきっとサギ
- ネコカフェに忘れられてるご朱印帳
- 思い出は心記憶は脳にあり
- ハンカチをあげたら箱も捨てぬ母
- 来年の夏は今日よりさわがしい
- 子らがいてりんごはうさぎだった頃
- 講釈は後で聞くから飲ませてよ
- 飽きられたオモチャ悲しい言葉やね
- 男の名消してスマホが軽くなり
- 「お二人の関係」何が知りたいの
- あげるよと孫が言うけどだんご虫
- 督促状バラの切手が貼ってあり
- 大人には見えぬ風船飛ばしてた
- オレオレと言うがどの彼だったっけ
- 一合が鍋に張り付くひとりぼち
- 結局はやせないまんまクラス会
- 恋なんてしていたのかな祖父と祖母
- 年下になった遺影の中の夫
- お祝い用シャンパンずっと冷えたまま
- 孫というビックリ箱と弾む夏
- 地球にはやさしい人がよく怒る
- 季節まで外国産になってきた
- その映画だれと見たのと聞けぬまま
- 逆上がりできないけれど子も産んだ
- 去年より2ミリほうれい線が伸び
- 愛想笑いうまくなってる顔洗う
- メインにはならぬがないと困るネギ
- ありがとはさよならだった小倉駅
- 不安という宙ぶらりんがたまに来る
- 孫からのクイズ当たらぬよう答え
- ジェラシーとコンプレックスまだ元気
- 宿の下駄はいて二人で霧の中
- 一年に六十時間くらいTEL
- 聞きたくもないものもある隠し味
- 本当も嘘もたまって耳掃除
- 恋愛に歳は関係なくはない
- 口きかぬ子にカルシウムお弁当
- 雨音にメールはやめてペンを取る
- 亡き夫を思う電球替える時
- 平熱が低い朝には赤を着る
- ストレスと改札口でお別れし
- ボディコンをやめて心がたるんでる
- 吉凶のカードを作る印刷所
- 辛いのに笑う自分に辛くなる
- チョコレートみたいな声で孫が来る
- 嘘ついたことないですか閻魔様
- ばあちゃん子だった私がおばあちゃん
- 見ぬふりはできても心から消えぬ
- 女子アナを母の気持ちで見てしまう
- 今宵またロマネコンティ見せるだけ
- 孫に歳聞かれ45に設定
- 祈りつつまだ見ぬ孫に編み始め
- NOを言う時はいろいろ付け加え
- 3度目は嘘がつくれず出席す
- 授乳する女の胸の荘厳さ
- 言い訳が尽きてカントを語り出す
- 抱き合ったことある人とすれ違う
- 冷めているコーヒーちびりちびり待つ
- 朝寝してゴロゴロしたら晩ごはん
- 子は雪に飽きることない北九州
- 恋人の背たけヒールの高さ決め
- ケータイがなけりゃ知らずに済んだこと
- ゆびきりをしてなんてこと言えた頃
- ビルが建つ昔金魚を埋めたとこ
- 母は元気祈りのような嘘をつく
- テーブルのマナー習って味が落ち
- ひと切れの羊羹母を落ち着かせ
- 2杯目のレスカつわりを思い出す
- 帰れない橋を落として進むから
- 彼のこと忘れるために彼が要る
- ネクタイを外し私のものになる
- コーヒーに溶けたらいいなわだかまり
- 考古学少しかじってよくしゃべる
- バーゲンが似合う女で終わるのか
- 下腹が育ってチャイナドレスやめ
- グルメ旅次のページはダイエット
- 雑踏をつくり上げてるひとりぼち
- 防犯のグッズ揃えてひとりぼち
- 若かったマックシェイクが飲めた頃
- 楽々とこなす3才ヨガポーズ
- 膝かけを持参わが家になる図書館
- ゴキブリもバラも創った神おがむ
- 黙祷の間園児は何思う
- ビー玉がふたつ家宝の壺の中
- 何もかも二つ揃えた頃があり
- 駅までは15マイルと言われても
- 言い方の強い男が勝つ会議
- もう夜は眠るだけです二人旅
- 本当の話も少し夜の街
- 孫が来て知るキッチンの恐しさ
- Suica買う東京人のよな顔で
- 次の酒考えながらビール注ぐ
- たばこに火昔はそんな間があった
- 届いたか聞かなきゃ言ってこぬ息子
- 結果知る歴史ドラマに興奮し
- 失敗を笑みではカバーできぬ歳
- 少なめに罪を明かしている懺悔
- 平凡な主婦というのはどんな主婦
- 2年目の恋は退屈パンかじる
- 夏という誤解の中で恋をする
- ネパールで神と呼ばれている歯医者
- ソーメンを語る男とお別れし
- 10円の飴の名前が琥珀王
- 同じ名で運命まるで違います
- 謝らぬ友から暑中見舞くる
- 子をかかえ道を選べなかった母
- 山奥で誰のためなの咲き乱れ
- 九州に来るのは左遷なんですか
- CTの間無欲になっている
- 風邪の次花粉に泣けば夏になり
- 好きだよは軽いコロンのような嘘
- ひとりぼち5枚セットの皿を買い
- 主婦ですねイチゴパックの裏を見る
- 口ぶりはリンカーンだが改竄し
- あみ棚のスイカ終点でも降りず
- ディープキス血は桃色になっている
- 歳ですと言って自分を檻に入れ
- 飽きるより慣れるの方が恐いかも
- 辛い絵に見えた私が辛いから
- 株を知るマンハッタンの靴みがき
- 好きな人いなくて月はただの月
- 沖縄に映画ではない戦闘機
- 季語3つ入っていると注意され
- 眺めてる人の数だけ月があり
- 湯豆腐の横でうとうとしてるネギ
- 髪くらい遊んでみたらお母さん
- 日記書く一行目から辞書がいる
- 小春日や忘れ上手の恋上手
- 真夜中のアサリのびのびしているわ
- 病む友の方がきちんと生きている
- 遊びではないと言ったら終わる恋
- コシのあるうどん踏まれた過去があり
- 純喫茶ヒロヤマガタと待ちぼうけ
- 強さよりやさしさに負け和解する
- 立ち直るためにケーキと下着買う
- 落書きのLOVEや〓(ハート)のつまらなさ
- 7才は諜報部員義母の部屋
- おじさんがコスパがどうのこうの言う
- 無花果に指を入れてるような恋
- 恋人がいれば半日煮込みます
- 勝子って感じなのかなヴィクトリア
- この恋で20ccほど泣いた
- カピカピの回転寿司のよな私
- 3時間かけたポトフと待ちぼうけ
- (笑)付けているけど怒ってる
- 二日酔い誰から借りた傘だろう
- ブラジャーの試着おっぱいかき集め
- 友として5才の恋を聞く湯船
- 慈悲深いお顔がふっとおそろしい
- 金曜の夜もお茶わん洗ってる
- 唇はお祈りもするキスもする
- ここだけの話がとてもつまらない
- よく気付く性格なのね怒りんぼ
- 暗いのは20ワットじゃなくあなた
- だんだんに合わなくなった鍋と蓋
- 風景になって男を待っている
- 長生きのネコの人間臭い顔
- 天敵が去ってしまってから弱り
- 熟女会昔の恋を盛り放題
- 初めてのコーラ酒より覚えてる
- デザートを2倍食べてる休肝日
- 志望して志望理由を考える
- 十八の美人の横に立つ勇気
- 芽を育て花を終わらす雨が降る
- 喪服着ていても女はよくしゃべり
- 惹かれるわニセアカシアという名前
- 好きだったレッドフォードもおじいさん
- 玄関のドアノブ握り素にもどる
- 煮えきらぬ男の上に塩パラリ
- 純白の筆をおろす日自虐的
- りんごから裸婦に変わって受講増え
- 新品の白が来るまで白でした
- たまご焼パクリいいことありそうな
- ミサに行く人にうつむく朝帰り
- エチケットとれて弱気になった瓶
- 渋滞を見ながらハエが飛んで行く
- 行間の思い気付かぬ男たち
- お誘いにノーと言えないワイン揺れ
- よく笑う子によく笑うママがいる
- 書き順と曜日おかまいなしの日々
- トトロからどんぐりもらえそうな朝
- いらんこと気付かなければ続く恋
- 夕焼けか朝焼けなのかまだベッド
- 品の良い気分で歩く鳩居堂
- 母用とわざわざ言って買う湿布
- グロス付け誰と競っているのやら
- 泣き止んでからが女の正念場
- 色っぽく誘ってるのが毒茸
- 心配は咬まない犬と育った子
- 彼の風邪もらったのよと勝った顔
- 呑んべえと助べえいつも笑ってる
- まったりの意味が娘と違ってた
- 母さんに渡しただけのスペアキー
- 大皿の盛り付け方を聞くひとり
- 追伸になって大きく息をする
- 母よりも年上だった岸恵子
- フォローなどするからもっと傷つけた
- 子供屋という名悲しい古本屋
- 夜中までジルバ踊って朝は主婦
- もし虫がギャーッて言えば叩けない
- カサカサの踵しばらく来ない彼
- 答えにはならないけれど抱きしめる
- 老いていく母が悲しくなりケンカ
- 名も知らぬ男性と見る冬花火
- 噛まぬよう噛んで仔猫を運ぶ猫
- 良心がうっとうしくてならぬ夜
- 脈拍の上に香水のせている
- 羊羹がずっしり重い頼み事
- 欲望と見栄で保っているカラダ
- 音たてて鼻かむ女性日本晴れ
- アイタタタアイタタタタでヨガ終わる
- 恋を終え正直者にもどります
- どの群れもそうなるという8対2
- 一匹で生きていけないのね鰯
- 料理にも入れると愛が足りないわ
- 3才に負けてやらないおじいちゃん
- 服従はしない満腹なんだもん
- バーキンが大股で来るクラス会
- 意地を張ること見失うバナナパフェ
- 勉強というフレーズに弱い母
- お鶴九州のばあばですけどミニスカよ
- 決心がつかないまんま除夜の鐘
- うれしい時参ったナーと祖父は言う
- 畳上げ10年前の万柳欄
- 閻魔様2回良いことしましたよ
- 正直に生きたらなれる天邪鬼
- 上下するシャイな男の喉仏
- おしゃべりと無口がいますお花にも
- トイレだけ借りますリッツカールトン
- ナイターに夢中なくせに肩を抱く
- 少年は光と影を知り始め
- あなたよりケーキが好きなことナイショ
- 夫には言えない夢で弾む朝
- ひとりの夜想像力を持て余す
- アフリカの蛸も浸かっているおでん
- この顔は変わらないけど美容院
- 母に言う時には元の銀行名
- 赤ちゃんの私知る人いなくなり
- 水割りがしみて虫歯に気が付いた
- リンゴ飴なめてかわいく見えぬ歳
- 知らない児夫をパパと呼んで去り
- アドリブは譜面どおりに弾けてから
- できないをしないと言って淋しそう
- お豆腐を落とし朝から暗くなり
- 女子力と言うがフリルを付けただけ
- お砂糖と私に賞味期限なし
- 有罪ですよ私をふれば
- 会わなけりゃ大嫌いにもならないわ
- ドロドロの時を見せないガラスです
- 旧姓にもどった姉はよく眠る
- 川に石投げて私をやり直す
- 人生を変えた言葉が出て来ない
- お刺身のつまと私が残される
- エプロンのポッケに少し主婦の夢
- 未亡人そんな名前も持ってます
- 農もせず漁もしないで食べている
- コンビニはどこにあっても雑誌ココ
- 紫のショールで隠す首のキス
- 揺れたのは船か私か桟橋か
- 夏草に犬と3才よく似合い
- 恋人と別れた駅に孫と立つ
- 恋をするたびに初恋だと思う
- 何度目のデートで紳士やめますか
- お迎えの傘をふりきる男の子
- いいね押しひとりぼっちじゃない気分
- 2時間も泣いて2時間無駄にした
- お化粧を落とせばきっときれいな娘(こ)
- うちに来たとたん大きくなった家具
- 5才には5才の悩み爪をかむ
- 燃やさなきゃならぬ手紙はもう来ない
- ご多幸を祈って議員さん帰る
- よくできた嘘を聞いてる梅雨の部屋
- 包帯を巻けば一日その話
- 髪の毛の多い男がよくしゃべる
- ジュリアナで踊る阿呆になれた頃
- 切り札を握りゆっくり眉を引く
- 大声で泣けるあなたは大丈夫
- 大福をパクリそろそろ終わる恋
- 本能のままに生きたら叱られる
- チェックインしたとこまでは覚えてる
- 娘らに大和撫子説明し
- 何人が泣いたら声が届くのか
- もてた日は胸が2センチほど上がる
- 一心に茶筅何かを忘れたい
- 夢なのか事故かひと晩だけの恋
- のんびりと生きるか恋を始めるか
- 美しい爪の男に誘われる
- 集合写真まん中と端決まってる
- 毬をつくことを覚えてから女
- 逢いたいと言ったら負けた気がするの
- 体調はビール飲めるかどうかです
- 庭の花花瓶の花の向こう側
- 白黒のテレビで見てた青い鳥
- 困るのはお金持ちへのプレゼント
- 本心を言う時混じる国訛り
- みそ汁とトースト並べ母といる
- 腹一杯食べて念力弱くなり
- 熟女って熱帯性の低気圧
- 川柳が好き人間が好きだから
- 我が夫を呼び捨てにする女来る
- 入るなり父母のケンカを知る空気
- 割箸を2回も落としグラス置く
- 失恋も端折って言えばおもしろい
- よくしゃべる男子クラスに一人いる
- 開けられるドアと信じて閉じるドア
- 別れ時ワインの澱がよく見える
- 押入れに入れると孫は大はしゃぎ
- ストレスを放り込んでる脱衣かご
- 二次会へビンゴで当てた米かかえ
- 嘘言わずホントも言わぬ協調性
- 夫にはならない人と冬の街
- 新年やお薬手帳3冊目
- ウェストをなくして着物美しい
- キスチョコをひとりで舐めるイヴの夜
- ひと休みしたらどうかと風景画
- 孫が去りアンパンマンと二人きり
- 母狂う別れが辛くないように
- 村祭り子ども御輿は蔵の中
- 10人も産んでた女たち思う
- アイロンの蒸気で未練とばしてる
- 川柳のお鶴で別の世界持ち
- 過去ばかり話す女とぬるい酒
- 亡父(とう)さんの名前見つけた図書カード
- ビンカンの回収日には反省す
- 天からの授かりものは手がかかり
- 心って淡水パールまたゆがむ
- 大切にされてるフリで里帰り
- 老眼に肌も風呂場も美しい
- ペ・ヨンジュン私に会わず結婚し
- 羊水にまだ浮んでるよな男
- なるほどの時給が並ぶ求人誌
- 帰国してサムソナイトが邪魔になり
- 墨をすり祖母はゆっくり夢と書く
- 姑と話した後はストレッチ
- 問い詰めた私が嘘をつかせてた
- 咳しても地震が来てもひとりぼち
- 新鮮に見える昔のワンピース
- お別れの言葉終えたが来ぬ電車
- 跳び箱の開脚自信みなぎる子
- ジェラートを二人でなめる恋日和
- 重い文(ぶん)だけど82円です
- 太陽がいっぱいだけど家事育児
- いろいろな心で下げるファースナー
- 落ち込むと想像力が不足する
- おこごとはピアスの穴を通り抜け
- なぜレースだらけなのかなランジェリー
- オスメスのように並んだビルの街
- 雨の午後ジャングルジムが鉄になる
- 歌舞伎座の母よそゆきの声と髪
- 嫁に来いなんて腕立て伏せしつつ
- 年下をアピールしたいから敬語
- 初期化したとたんに恋がまた作動
- 三本の矢はバラバラに飛んで行き
- 雨宿りできないビルが並ぶ街
- 車椅子たった二段に阻まれる
- ブランドでかためた人の腕に数珠
- 高血圧ばかりでやめたサプライズ
- 受動態説明脱ぐと脱がされる
- 隠し味聞いてないのに言いたがり
- おっぱいがあたらぬようにラッシュアワー
- ご無沙汰で始まる手紙ばかりなり
- 親が子を殺す治安の良い日本
- ハチミツの恋から和三盆になり
- 散らばった服で昨夜を思い出し
- お見通し猫のうす目にそう言われ
- 8センチヒールで視界変えている
- 忘れ物しない男に忘れられ
- 鍋つつきながら小さな妥協案
- パラフィン紙ほどの音たて恋終わり
- ゆるい恋フレアスカート少し揺れ
- 万葉から進化してない恋心
- 10人の女子高生で気温上げ
- 母性かな水やりすぎる替えすぎる
- 青魚頭に良いを付け加え
- 銃を持つ兵士息子と同い年
- 振りながら2才が運ぶ缶ビール
- 悲しみが足りて白ゆり美しい
- ジンフィーズ今夜の好きは今夜だけ
- 若い日のひと筆書きのような恋
- 満席のスタバで不況考える
- お鶴桐箱のメロンティアラが似合いそう
- 彼だけが来ればいいのにみな来てる
- 八の字に眉描いてから詫びに行く
- 空海の話は続く風の寺
- シャワー浴びいけないことをする予感
- 巫女さんが欠伸をかんでお札売る
- 駅までの道で私を組み立てる
- 本棚でノストラダムス黙ってる
- 再会へひとりぼっちと嘘を言い
- ティファニーの前で猫語になる女
- 始めたらウソと化粧は止まらない
- 冬の朝恋の出口に立つふたり
- 姉さんはまた失恋のうつぶせ寝
- 宵越しの不機嫌ファンデーションが浮き
- 書きかけの離婚届けで包む芋
- 狐火や夜はやさしい男の手
- 泣きじゃくる自分に酔っている窓辺
- 家電だけしゃべる夫婦の日よう日
- 万歳の手の平の向きまで言われ
- ショッピングなら簡単に一万歩
- 糠床を混ぜるIT時代にも
- 来客に夫婦のようになる夫婦
- 秋の風着物買ったと言い出せず
- ブランコと恋の下には水たまり
- ストローでぶくぶくしたいヤな話
- 心音がふたつになって酒をやめ
- 残業と言った夫に寝ぐせあり
- 停電とアランドロンを知らぬ子ら
- そして秋ビーチサンダル物干し用
- ひと言を飲み込むために大ジョッキ
- ドーナツを揚げて悩むの延期する
- いい人になってウエスト太くなり
- 居酒屋に私と忘れられた傘
- 知り合いか友かはっきりしない時期
- パーキングエリアで過去の恋に会う
- 波の音聞いてる瓶の中の船
- カルピスの中で揺れてる幼い日
- 極楽の様子を語る若い僧
- しあわせな日を退屈と言っていた
- 美しい人もきちんと年をとり
- 言い過ぎぬほどのワインでお別れし
- 対岸の町はしあわせそうに見え
- まだ胸にある父の地図母の地図
- アイロンをきちんとかけてつまらない
- もう少し悪を食べたらイイ女
- アスパラのゆで方恋の進め方
- 2カラットいただくまでの物語
- 気をつけの祖父とウインクしてる祖母
- 詩集から押し花若い日の私
- のっけからサンバのリズムしてる恋
- 願い事ばかりしている奈良の旅
- 今見てるものはホントにあるのかな
- 寝室を別にしてから仲が良い
- 綿菓子を顔で食べてる園児たち
- 貧相は今日も文句を言っている
- 友人の彼をちらちら見てしまう
- くやしい日心に少し鬼がいる
- 作業員テープカットを遠く見る
- 笑おうと思った酒で泣いている
- りんごむく男ナイフに刺して食べ
- 聞きたいことあって天気の話から
- ときめきはもうないなんて母の嘘
- 男たちのロマン石垣だけ残り
- 奥様に回収された酔っ払い
- フェロモンを押さえ込むよう黒い服
- 独房か私の城か台所
- ため息の度に周りを落ち込ませ
- やり直す男とホットウィスキー
- 失恋の後しばらくは哲学者
- 二度見され十年前のパスポート
- ダイヤですダイヤですよと薬指
- 小吉に納得できることばかり
- 両親のケンカで毬が弾まない
- 歯みがきで上下左右に胸が揺れ
- 娘はスマホ私は人に道尋ね
- フレンチの店でちょっぴり高い声
- 殺人の記事できゅうりが包まれる
- 風が吹き後(うしろ)の鯉に餌(え)が届く
- 全員が試着するのに買わぬ服
- スパゲティーくるくる恋もくるくるり
- 恋愛がのろい分別ある二人
- さよならの背(せな)にパンパン指鉄砲
- 夕焼けに児もそれぞれに影ができ
- よく研いだ包丁父の台所
- 輪郭が知りたい君の中のボク
- 出鱈目な話ウォッカのあてになり
- 削除するためにワインが2本いる
- 迷うだけ迷いカレーを頼む人
- コロンふりミニスカはいてオンにする
- あやしいね心理テストの中のヘビ
- 迂回融資半沢直樹から覚え
- 夜のこと金魚と私だけが知る
- イヤリング命中してた太るツボ
- しあわせと涙が恋の詰め合わせ
- ふた心足の小指を強く打つ
- 豹柄の叔母にもあった悩み事
- 恋じゃない人といるから楽な椅子
- 編み棒をせっせせっせと辛い夜
- 殺意などあったのかしら蚊を叩く
- ブランデーふらっとキスをしてしまう
- 決心はかたまりかけて中二階
- 良い嘘をつきましたねとお月様
- どんなのを言うの大人の別れ方
- トイレから食卓父の文庫本
- 皆勤賞抱きしめられた保健室
- 知恵熱も恋の微熱も遠くなり
- ケチャップは白をめがけて飛んでくる
- クラクション鳴ったら母が出て行った
- 百年の木には言葉が通じそう
- ハタキって言葉も消えていくのかな
- 運動は準備体操だけになり
- いいとこで笛吹きケトル鳴り始め
- 乗り越えるたびおばさんになっていく
- フォアグラも茶漬けも欲しい男たち
- 泣いててもポップコーンは減っていく
- 離婚するほどじゃないので芋を煮る
- 一回の嘘で黄ばんでいく心
- 出たかった家に時折帰りたい
- 言い訳に膜はっているミルクティー
- 明け方の湯たんぽのよな恋になり
- この肌で六十歳と言うテレビ
- まずカラを壊す力を持つヒヨコ
- モンラッシェ飲めばヒミツを話すわよ
- さよならに赤い唇熱を持ち
- デート中2度目のあくび許せない
- おにぎりが食べ放題の焼き肉屋
- 六種類くらいは入れた八宝菜
- 無駄遣いばかりしている寂しい日
- 007観て運転が乱暴だ
- ピンヒール何が何でも勝ちたい日
- ラメ入りの爪で食品説明し
- 信号で並んだ脚を比べられ
- 最初だけおいしい恋の砂糖漬け
- 流された地にもおいしい酒があり
- if付けて心をさぐる淡い恋
- 母にしか見えないけれど女です
- 仕舞風呂泣かねばならぬことがある
- ひとりぼち壁とおんなじ色になり
- 昔から反省文はうまいから
- 心配は父が何度もありがとう
- 娘のアロマ母の線香絡む家
- 柿を描きみかんと言われみかんにし
- ブランドのバッグのためにパートです
- 万博は五才でしたで歳がバレ
- スパゲティくるくる恋は負けられぬ
- 孫が来たとたんに変わる家の音
- 定年後たびたび開ける冷蔵庫
- 大海にいるようだった森の中
- パーティーへ仮面を3つ持って行く
- 天然ってすごいわ鯖の縞模様
- 芋ふかし笑い袋のような妻
- 濡れた瞳(め)で見つめてくれるけれど犬
- 切り出せぬままに一本ワイン空き
- チラチラとポルシェのマーク付きの鍵
- 仏壇の前弟の薄い髪
- 好物が亡夫と同じ娘(こ)と夕(ゆう)餉(げ)
- 恋文も展示されてる偉い人
- 離乳食疑いのない口を開け
- 似顔絵を描いてもらって我を知り
- 少しだけハートかじって行く男
- 姉ちゃんと一緒に花火持ちたがり
- ハチミツにジャムを重ねたよなオセジ
- 祖母だけどミニスカートをはいてます
- 恋をして初めて降りる駅ができ
- ソバージュを押さえつけたい映画館
- バスタオルたたむ手順も違う義母
- 侘びさびの茶室に金がかかり過ぎ
- 抱きしめるあなたは私だったから
- 文鎮を男の靴にのせておく
- 友達がいるからできるかくれんぼ
- 山奥で大河の源(もと)をポンと飛ぶ
- 魔法かな呪文なのかな愛してる
- 嫌いって何回も言うくらい好き
- 母さんの心を読んでいた日暮れ
- 汗だくの舞台納涼コンサート
- 茄子を焼く誰のためでもないけれど
- マツタケの山持ってるとくどかれる
- 大柄の黒衣(くろこ)気になる勧進帳
- メール見るふりで時間を見てる彼
- 明日はずす結婚指輪よく光り
- 走り去る男の影にシッポあり
- そばにいてもっと寂しくなっている
- 脱ぎにくいブーツに恋の八ツ当たり
- スピードを落とさずカーブ曲がる恋
- ティファニーで迷い百均でも迷い
- どの人にしよう揺れるイヤリング
- 正月の録画たまったまま4月
- 心配をせぬよう陛下ほほえまれ
- 千円の酒が哲学語り出す
- 看板にお昼のランチやってます
- 袂だけ揺らし泣いてるように見せ
- 社長だと先に言ってよ若い方
- 永遠に愛せるらしい歌の中
- その辺に落ちてないかな恋のワナ
- 子の熱を吸いとるように抱きしめる
- 陣痛に耐えて浮気に泣かされる
- 結婚はできない人と陶器市
- 慰めの言葉でもっと落ち込ませ
- 大掃除二月の記事はまだ平和
- 気にかかるらしい女性の胸のロゴ
- 抱きしめるはずが彼女のデカイ肩
- 美しい夕焼けざんげしたくなり
- ウンチする2歳哀愁おびた背(せな)
- 着物買う時はしっかりしてる祖母
- 唇を奪える距離で酔っぱらう
- 三度目の恋は確認多くなり
- 開けてないものにピアノとお針箱
- 写経する母に理由は聞けぬまま
- もうここは実家ではなく兄の家
- 美しいナイフ欲しがるのは女
- ロボットにしあわせになる手相描く
- コロッケを作る しあわせだと思う
- 目的が分からぬ祖母の網タイツ
- 高級車並び入るのやめた店
- デザイン賞 いらぬスペース多い家
- 引き出しにキスを忘れているルージュ
- 胃カメラが見つけるきのう泣いたあと
- ビリ競う でもライバルと言うのかな
- 怒っても泣いてもそばに袋菓子
- 裏切りを黒のレースに手伝わせ
- ヤケドした指を冷たい彼にあて
- 若松の女ごんぞう乳が張り
- べっぴんの神様 お風呂にもいるよ
- トーストが1枚ひとりだと思う
- 結婚をするとマメさがうっとうしい
- おあずけの時間 主賓のご挨拶
- 税務署が来ている間 口乾き
- 5名だけ並ぶ先着5名様
- 水仙が真っすぐ過ぎる二日酔い
- 逢いたいとメールしそうでスクワット
- 違うから惹かれて違うから別れ
- ひと泣きの後に自分の悪が見え
- 就職は決まってないが手帳買う
- 失恋はすぐに忘れるつけまつ毛
- 玉砂利にはいて来ないでピンヒール
- 唇はキスの形で文句言う
- なぐさめる間 女は泣き止まぬ
- ふた心浮かべワインの深い赤
- 怒ってる時に焼きめしうまくでき
- ユーモアの足りない終わりかけの恋
- 諦める旅で会いたくなってくる
- 結局はお菓子作りにナポレオン
- 3才と2才が話し合っている
- 床の間にほめなきゃならぬ壺があり
- 歌うのがとっても好きなのにオンチ
- 十八歳(じゅうはち)の夢は都会に飲み込まれ
- あんま機に抱かれる方が多くなり
- 水炊きを囲みほどけていく怒り
- 一本の電話を待ってワイン空き
- ちょっぴりの残念混じる福袋
- 背伸びした恋の想い出コークハイ
- ふる時にごめんねなんて言わないで
- 好きだから疑わしきは罰します
- 習っときゃよかった母の障子貼り
- 亡父(ちち)想う たわいないことばかりなり
- エプロンを外しまぶたに色を付け
- 潮時の男と茹で過ぎたパスタ
- 前を行く人の人生想像し
- ふり向いてふり向いてない彼を見る
- ロボットにやさしい言葉だけ教え
- 町内に90歳が20人
- 歯みがきと川柳だけは続いてる
- 還暦の先輩たちが若すぎる
- スタイルがとてもよかったレントゲン
- 整形で取り戻せない初心(うぶ)な顔
- 今までの男の写真青く燃え
- 男など懲り懲り帯をしめ直す
- 魚の身 魚の肉と言わないね
- 前世はフォアグラですと占師
- 長編の恋を終わらせ梅茶づけ
- 肋骨の2番目辺でまだ想う
- 爪まるく切って良い娘(こ)になりすます
- 目覚めれば空のワインと知らぬ人
- 男なら死ぬと陣痛説明し
- 初恋の顔を見つける虫眼鏡
- 川柳を始めなければただの主婦
- ヨーヨーが急いでもどるくらい好き
- 生命線 小さなグーの中で伸び
- 梅雨晴れにドロドロの恋天日干し
- 結婚へ二人をつなぐ向かい風
- 暮らせない人と半日そばを打つ
- 皆さんは先週キスをしましたか
- ロボットかもしれない孫のお嫁さん
- 偉くない息子でよかったそばにいる
- うそ泣きの後に はふはふおでんかな
- 美しい人もしていた片思い
- 友達にもどろうなんて言われ 雪
- ごめんねにいいよで歩く帰り道
- 子はママを ママはメールを見ています
- 休息になっているのか子の寝相
- 屋上で手を合わせたら人だかり
- アイスティー少し残して待つ花火
- 離れるとやさしく光る街と人
- ブラウスがパジャマに街の話する
- ハイハイの孫が見つけたコンタクト
- 幸せが来ると不安でたまらない
- お化粧に20分×(かけ)20年
- なんとなくただ6月のかき氷
- 庭石を連れて行けないお引っ越し
- 腕時計別れの朝も狂わない
- 触れないでくださいとありちょっと触れ
- 走ってはふり返る児と歩む春
- 6人の大人走らす吾子のせき
- 団体に混じって歩くひとり旅
- エプロンで迎えてくれた里の父
- 耳掃除動かぬ君をひとり占め
- ヤな人にくどかれた後耳掃除
- 教科書を変えても過去は変わらない
- 好きな人できて政治が気にならぬ
- 秋時雨また会いたくて借りた傘
- 失恋の長いまつげは生乾き
- 留守電を何回も聞くワンルーム
- 花束が届き人妻ちょっと飛び
- それぞれの君へメールのふたりきり
- 香水をたっぷりつけてうそをつく
- 着信へふわふわミトン間に合わぬ
- 恋ならば30年も続かない
- 霧雨の家裁へ続くアスファルト
- 夜明け前幹事ふたりのコップ酒
- アルゼンチンタンゴを踊る肉踊る
- 私が犯してたかもしれぬ事故
- 泣きやんでレモンをかじる午前2時
- 見た目では彼のすごさは分からない
- 外しても留めてはくれぬほどの愛
- 口答えがまんさせてる舌下錠
- うそついてはふはふ食べるかけうどん
- 流行の服と体形にらみ合う
- 熱燗(あつかん)へわたしもこぼれそうになり
- 包帯を巻けぬところに深いキズ
- おひな様もうしまうのはやめにする
- サザンから演歌に変わる3杯目
- 実家では泣けぬ自分が決めた道
- 大丈夫上原謙を例にあげ
- 悪ぶってしゃべる恥ずかしがり屋さん
- 許そうと決めて自分が楽になり
- 「美人だ」に「けど」を付けたら長くなり
- 鏡ふき掃除をやめてパックする
- ペアウオッチたまりいろんな顔浮かぶ
- 3秒で寝ちゃういっぱい笑った日
- 平凡なしあわせ詰めた二重あご
- 娘は服を母はおかずを悩む日々
- コーチとはテニス以外で汗をかく
- この恋を星座なんかに邪魔させぬ
- いい別れひと口だけのペリニヨン
- 誰にでも付いて行きたい夕間暮れ
- 本当は王子なのって虫に聞く
- しないなら電話するよと言わないで
- 消しゴムを買うにも迷う幼い日
- 学校に行かぬ子どもと星を見る
- 口のしわ気になりやめたハーモニカ
- 鉢巻きの意味を子どもに尋ねられ
- 恋なのに正しいことを言うあなた
- こんなにも仲良く揺れる万国旗
- 実印をポンと渡してくれる親
- 仲直りみたい薬が効いた時
- ストローをくわえ視線を絡みつけ
- ゆっくりと話されたってフランス語
- 紙風船君の唇君の息
- 君の過去あってステキな君がいる
- 大声の説教しんに届かない
- 庭を掃くチョイト箒(ほうき)に乗ってみる
- 元彼のうわさ話にグラス揺れ
- キスしたらもうキスだけじゃもの足りぬ
- 割りばしのうどんのつゆで道教え
- いつの間に扉四つも冷蔵庫
- クリスマス彼いなくてもクリスマス
- 出張は圏外ばかりになる夫
- お隣を許せず願う世界平和
- まゆを描くほどは集中せぬ料理
- サルトルの話をされた初デート
- まだ好きが残る紅茶をかき混ぜる
- キリンだと首の長さで分かった絵
- 帰るのか行く人なのか午前4時
- 生ビール思い浮かべて掃除する
- 誘われた店で自分のランク知る
- 翌朝の顔考えてグラス置く
- 片方が風邪で静かな子ども部屋
- 待ち合わせ早く着いても母はいる
- おっぱいも月もまあるい露天風呂
- 食べ物か飾りか迷っているパセリ
- 趣味なのに熱中すると依存だと
- 手紙読む胸で相手の声になり
- タクシーがのろくて気付くねずみ取り
- 議員さんだけが太った村おこし
- 姑(しゅうとめ)の茶碗とっても割れやすい
- 心配は彼に素顔を見せる朝
- 年上の人と決めてた若いころ
- 予定表ハートのマークひとつ付き
- 男の子おむつあけては自慢され
- 奥様の性格のぞく冷蔵庫
- なぜうちにあるの妊娠検査薬
- よかったねずっと夏かと思ってた
- 川柳にしなきゃドロドロしてた恋
- 孫となら海にも出向く博多帯
- 愛情が芽生え友情壊れてく
- 担任を嫌いクラスがまとまった
- ホテルまで眠いと言った彼元気
- 若いねは相対的なことだった
- 友人にワタシ紹介しない彼
- 嫁に来て何トンの米といだかな
- 失敗し激辛にして出す料理
- もう好きじゃないから腹も立たないわ
- 事件かと思った新宿交差点
- 虫食いの位置に大きなバッグ下げ
- キャンセルになったなキムチ食べている
- 何人の女性知ってる彼の部屋
- 疑っているわわたしの干支を聞く
- 友達の友達の友芸能人
- 先生のあだ名納得保護者会
- ワイン注ぐ度に講釈聞かされる
- 助手席にわざとピアスを置いておく
- 税務署が来た時安いお茶を出す
- ランジェリーだけのカタログ夫が見
- 動物が好きで動物園嫌い
- 金借りにシャネルスーツで来られても
- 水道管中を見てから水飲めず
- 拝啓の後が浮かばず前略に
- 息子への説教ビール券も入れ
- 紅が付き買おうか迷う試着室
- 終わったらごちそうさまと言った彼
- スッピンの妻のゴミ捨て早いこと
- 好きな時好きだったとこ今嫌い
- 子どもから聞かれ気が付く不思議だな
- ペコちゃんの頭をみんな叩くのね
- ヤなとこを数えあげてるふられた日
- 別れたの正しく言えばふられたの
- 連絡はボクからすると念押され
- 高速に落ちてる靴が気にかかる
- 長ぐつが視線集めたホテルロビー
- 学生の子の年金も親がかけ
- おっぱいを持ち上げられて聴診器
- お食い初め家族集まり口をあけ
- プライドが先に言わせたさようなら
- お隣が勲章もらって父静か
- 10回のメールに1回来る返事
- プロポーズ返事待ちだという娘
- 図書館で借りた本から1万円
- 嫁ぐ前お金なんてと思ってた
- 体重が同じ友からケーキくる
- 子にかかる教育費より電話代
- 高速と縄跳びうまく入れない
- メル友に合わせて年齢(とし)を変える祖父